さとし日記

都内大学院生のブログ

『予想どおりに不合理 行動経済学が明かす「あなたがそれを選ぶわけ」』を読んだ。

積読になっていたものをようやく消化することができた。

Kindle版の積読は、余程意識しないと購入したことすら忘れ去られてしまうことが判明した。

次から専門書を除き、何かを購入したらそれを読み終わるまで、新しいものは購入しないことにしよう。。

 


 

タイトルにある通り、行動経済学の話。

従来の経済学は、人間が合理的に動くことを前提にしているけど、実態は必ずしもそうでもなくて、不合理なことが多いよねということを実験をベースにまとめたものが行動経済学。

 

松竹梅のメニューのように、選択肢が3つあると、多くの人は真ん中のものを選ぶ。

そのことを利用して、売りたいものを真ん中に設定するというのは有名な話だと思う。

 

 

で、この本の内容は6,7割くらいは既知のものだった。

 

というのも、1年くらい前に、有斐閣の『認知心理学 (New Liberal Arts Selection)』という教科書で結構がっつりと行動経済学を勉強したことがあったので「あーあれね」となることが多かった。

 

読む順番が逆だったら、本書『予想どおりに不合理』もさらに楽しめたと思うし、有斐閣の教科書の内容ももっとスラスラと理解できたと思うと勿体ないことをしたなと。。

 

 

ただ、知らないことも勿論あって、特に面白かったのは「プラセボ手術」の話。

 

1950年代まで、狭心症の治療法として「内胸動脈結紮」の手術が行われていた。 

この手術は、患者に麻酔をかけ、胸骨を切開し、内胸動脈をしばる。

すると、心膜横隔動脈への圧力が上昇して、心筋への血流が改善するというもの。

 

ただ、一部の医師の間では「本当に効果があるの?」と疑問に思われていた。

そこで、1955年に、心臓医レナード・コブと数人の同僚が、「患者の半分にはこの手術を施し、もう半分には手術をしたふりをする」という大胆すぎる方法で検証してみた。

すると、両グループとも、患者は「胸の痛みがすぐに和らいだ」と報告し、心電図検査でも、本物の手術を受けた人とプラセボ手術を受けた人に違いはなかっ05:40たというもの。

 

この内容から、

予測によってわたしたちの経験に対する感じ方やとらえ方が変化する

ダン アリエリー. 予想どおりに不合理  行動経済学が明かす「あなたがそれを選ぶわけ」 (Japanese Edition) (Kindle の位置No.4204-4205). Kindle 版.

 と纏められていたけど、それよりも「手術をしない」という大胆さが個人的なおもしろポイントだった。

 

「関節鏡視下手術」でも同じように効果がないことが証明された。

この時も、「麻酔、切開だけして、何もしないで縫い合わせる」というプラセボ群を作っているのが面白い。

しかも「関節鏡視下手術」に関しては、2000年代に入ってからの話で、当時も結果を報告したあとは非難轟々だったみたいだけど、現代では絶対にできないだろうなぁと。。

 

今でも本当に効果があるか疑問に思われている手術は数多くあるらしい。

ただ、如何せん、それを検証することがあまりにも困難なので、なんとなく続けられているようだ。

 

本筋とはややズレたポイントを強調することとなったが、同じ薬でも価格によって利き方が変わってくるみたいな話もあって面白かった(「プラセボ手術」の後に紹介されていたので印象は薄れてしまったけど)。

 

 

そして、今話題の、カルロ・ロヴェッリ著『時間は存在しない』とかもそうだけど、ある学問分野では常識のことも、前提知識が全くない人でも理解できるように噛み砕いて書かれた本は売れるのだなというのが新たな気づきでもあった。

 

この本は、「具体例を用いた導入、実験内容の紹介、実験結果のまとめ、一般化」の流れが綺麗でとにかく読みやすかった。

 

翻訳されたものだから、所々日本語の文章では使われない比喩などもあるけど、それも味があって良い。

 

「行動経済学なんて全く知らん」という人にはうってつけだと思うし、「それなりに知っているよ」という人でも、上手い文章の書き方が学べるという意味で良書だと思った。